市町村保健師の魅力について
- 2014年11月26日
- OBからのメッセージ
市町村保健師の魅力について4期生の鈴木さんからメッセージが届いております。

皆さんこんにちは。平成18年に本学を卒業した鈴木逸斗です。
私は現在、北海道十勝、帯広市の隣町にある幕別町の保健師として勤務しております。
仕事の内容は、高齢者支援にかかわる業務に携わっています。といっても、実は、保健師として幕別で働くようになったのは、今年の4月からなので、まだ半人前にもなれていない状況です。
私は、今年の3月まで、地域の総合病院で看護師として勤務をしていましたが、大学卒業時から保健師としての勤務を考えておりましたので、「3年くらいは病院で看護師として働こうかな」という位の気持ちで病院に就職しました。そして、その間にチャンスがあれば、保健師としての転職先を見つけ、地元である愛知県に帰るつもりでいました。しかし気が付いてみれば、愛知県に戻るどころか、8年間も病院を離れることができずにいました。

このように書くと、私が看護師として働きたくなかったように思われるかもしれませんが、看護師としての勤務が嫌だったわけではありません。むしろ看護師として経験しておきたいこともたくさんありました。ただ、やはり、自分の目指す将来像や、果たしたい役割をこなすには、保健師しかないという思いが強かったために、こうした考えに至ったのです。
私が従事したかった分野は、職域保健でした。いわゆる、大手企業に配置され、その企業の中で従業員の方の健康を常に維持していく産業保健師のことです。職域保健では対象者が限られた環境にいるため、より具体的な対策を実施できると考えました。また、対象者の意識だけでは解決できないようなことを、企業側と交渉することで改善できるというのは、自分にとって大きなやりがいを感じたのです。そして幸いにも、卒業前に保健師としての就職先が見つかり、学生時代に、学力的に低空飛行をし、「国家試験合格は大変厳しい」と教員から言われた私は、奇跡的にも国家試験に合格し、もう道が決まったつもりでいました。しかし、奨学金を借りていた関係上、また、経験を積んでおきたい分野があったことから、保健師として働くことも愛知県へ帰ることも先送りにすることにしたのです。

ただ、ここで大切なのは、私が過ごした8年間という回り道が無駄だったのか、ということです。看護師として勤務しているときは、ただの遠回りとしか思えませんでした。もちろん、看護師としての仕事にやりがいを感じ、仕事から得られる喜びも多くありました。ただそれとは別に、「ここは自分の居場所ではない、保健師の仕事には全く結びついていない」という思いが常にあり日々葛藤していました。
ちなみに看護師勤務の8年間の内訳としては、精神科病棟で5年、内科外来で3年の勤務でした。精神科病棟では、長期入院の統合失調症患者に対する退院支援や、退院後の社会生活能力向上に重点を置いた看護を目指していました。外来では、救急患者への対応を確実なものにするため、研修に積極的に参加したり、糖尿病や高血圧の継続的指導を効果的にするために資格を取得しました。
一方、現在保健師として、取り組んでいる仕事は、介護保険要支援者のケアマネジメント業務と、65歳以上の町民に対する1次予防・2次予防事業の計画・実施です。看護師としての経験が、現在の業務に直接的に役立っているとは言えません。むしろ、学生時代の学習内容が記憶から抜け落ちていたり、制度が変わっていたりすることでゼロからの学習となり、看護師時代の8年間が大きな障壁となっている面があります。
ただ、看護師時代には、精神科では、対象者が安心できる関わり方や認知症患者への具体的なケアの仕方を学び、身につけることができました。また、内科外来では、生活習慣病患者への指導実践ができ、人間ドックアドバイザーの資格を取ることができました。さらに、夜勤の際には救急外来を担当し、救急対応を含めた医療現場での知識・技術の習得をすることができました。

このような看護師の経験が無くても、保健師として勤務した際に困らなかったと思います。しかし、今の私にとっては、こうした経験こそが自分の支えと自信になっているのです。地域住民へ安心感を与えるコミュニケーションスキルと、医療経験によるエビデンスに基づいたアドバイスができることで、地域住民に不安な思いをさせず、信頼を得ることができていると感じています。また、今は部門が違いますが、特定健診における保健指導も保健師の仕事です。この場面では、外来での経験や取得した資格を大いに活かせると信じています。
このように充実している保健師の勤務ですが、先にも述べましたが、私は、目標としていた職域保健に携わることはできていません。しかし、役場という職場内で、産業保健師の役割を担うことは不可能ではないと信じています。そのためにも、今、学べることを学び、後々の糧にしたいと思っています。

長々と書きましたが、皆さんに伝えておきたいのは、「どんな回り道でも、無駄にはならない」ということです。今後、職場や業務内容が、希望通りにならないことはたくさんあると思います。しかし、目の前で起きている一瞬一瞬を大切に、真剣に過ごすことが将来の糧になります。目標を諦めるでも、現況を嘆くでもなく、「今ここで、自分に何ができるか」を必死に考えることがとても大切であり、そうしているうちにチャンスが巡ってくると思っています。
皆さんがいろいろな経験を積み、他の誰にも出せない色を持つことでチャンスは巡ってきます。皆さんのご活躍を心より祈っております。